あの日いとことふたり祖父に連れられて‘けしぼうず’という山に登った。大人になってこの地を訪れ、懐かしいあの山を捜していた。遠い昔山頂で、いろいろな話をしてくれた。あの道をたどれば祖父とまた会えるだろうか。あの山の、あの道をもう一度。
中学の頃に私が盲腸で入院した時、数日後に祖父も隣のベッドに入って来た。私は祖父の病名を知らなかった。その時は私の方が身動きできず、祖父に雑誌を買って来てもらったりした。その雑誌が今でも本棚に並んでいる。
田んぼを見ると思い出す
網とバケツをぶら下げて 祖父とすくった水の中
バット一本ボールを一個 グラブをふたつたずさえて
祖父と出かけた休日は 私の野球の一ページ
海外旅行のおこずかい
祖母からもらった1万円 手元に残った1万円
やっと日本に帰って来たのに おばあちゃんはいなかった
ずっとしまってある1万円
私は飛行機が怖い。別に乗りたくもないし、乗る必要もない。
行ってみたい国もないし、行く機会もない。たった一度だけ、海外へ出た事はある。そしてその間に祖母を失った。それが嫌いになった原因ではないが、「どうしてそんなに遠くへ行っちゃうのかねぇ」と、寂しそうにしていた祖母を思い出す。
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